かつて一世風靡したスペシャリティーカー達3選
"スペシャリティーカー"というジャンルをご存知ですか?
2ドアで、スポーツカー程ではないがその雰囲気が楽しめて、それでいて廉価な車たちの事です。リアシートが使い物にならないほど狭いことが大半なので、家族や友人とワイワイすることが目的でなく、恋人とのデートに多用されたことから「デートカー」とも呼ばれています。
昭和末期から平成初期にかけて流行し、夜の都会を沢山のデートカー達が若いカップルを乗せて駆け抜けていったそうです。
しかしバブル崩壊後、セダンやミニバンと比較して荷物や人が積めず経済的ではないスペシャリティーカーは衰退の一途を辿り、今では小金を持ってそうなおじさんが86やロードスターに乗っているのを時々見かける程度です。
今回はデートカーが健在だった時代に、特に流行ったクルマを紹介していきます。
[目次]
トヨタ ソアラ(Z20型)
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「世界に一つ、日本にソアラ。」
所有するだけで男の価値が3倍になる…と言われたほどの「デートカーの王様」です。
ソアラが初めて市場に姿を現したのは1981年。当時のトヨタはアメリカで概ね好評かを得ていたのですが、”ベンツSクラス”だとか"BMW6シリーズ"のようにイメージリーダーという存在が無いことを気にかけていました。そこで欧州の高級GTにも通用する高級車を作ろう、ということで誕生したのがソアラです。ただし、正式にソアラがアメリカでデビューしたのは1991年、3代目になってからのことです。
2代目となるZ20型は、初代がライバルである日産 レパードに勝利し、高級クーペ市場を独占した頃に登場しました。最上位グレードは直6 3000ccターボ,240psを発生させるエンジンを搭載した3.0GTで、価格は400万弱。しかし当時はバブル真っ盛り、僅か5年の販売期間で30万台を売り上げ、若者たちからは羨望の眼差しで見つめられました。
レクサス上陸後は"レクサス SC"と名前を変え、2010年にSCが販売終了となったことで30年の歴史に幕を降ろしました。
ホンダ プレリュード(BA1/4/5型)
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ソアラと共に駆け抜けたスペシャリティーカー。エンジンは1800ccNAとソアラよりは格下になりますが、全グレードにサンルーフを標準装備、ホンダ車として初めてリトラクタブルヘッドライトを装備し、低い車高と広い車幅を実現した、スタイリッシュなクルマです。
「スポーツカーなのに駆動方式がFFなのか?」
と、発売前は車雑誌から批判を浴びていたのですが、蓋を開けてみるとリトラと日本車らしくないロー&ワイドな見た目が若者たちから脚光を浴び、値段もソアラのそれよりもすっと安かったことで爆発的にヒット、デートに多用されたことで「デートカー」という単語が誕生しました。
2代目は初代の成功を引き継ぐべく、排気量を2000ccに、量産車として世界で初めて4WSを装備するなど前衛的な進化を遂げ、たった四年で60万台を売り上げました。
日産 シルビア(S13型)
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プレリュードの牙城を崩すべく現れた5代目シルビア。排気量は1800cc,2000cc,2000ccターボで、グレードは下から「J's」「Q's」「K's」とトランプを意識した名前になっています。
キャッチコピーは「アートフォース シルビア」。当時としては未来的なデザインで女性から大人気、1988年のグッドデザイン大賞を受賞しました。また、日産がFF方式かつボンネットを低く見せる方法を持ち合わせていなかったことから駆動方式がFRになり、希少になりつつあった軽量FRスポーツ車ということで、走行性能重視の走り屋たちからも厚い支持を得ました。
当初、日産はシルビアを"デートカー"として売り出したかったのですが、上述の通り走り屋からも人気に得てしまったため、6代目のS14型が3ナンバーサイズに大型化した時「ライトウェイトスポーツが大型化すんじゃねえ」と批判を浴びてしまいました。S15型では再び5ナンバーサイズに戻り、グレード名も「Spec.S」「Spec.R」と走りを意識した名前に、更に純正でブースト系を装備するなど、「どうせコレが欲しかったんだろ」と日産の方が折れてしまいました。
S13販売終了から四半世紀経ちますが、いまでもドリフトのベース車としてサーキットで見かけることは多いです。