ユーノス、アンフィニ…5チャンネル時代のマツダの迷車たち
現在のマツダのラインナップは、車種を絞った少数精鋭といった感じです。
しかし、かつてはトヨタの様に複数の販売チャンネルを持ち、販売車種も今と比較して豊富にありました。日本国内における販売力を強化しようという思惑でこのような戦略を取ったそうです。所謂”5チャンネル化”です。詳しく書くと
結果は知っての通り、直後のバブル崩壊で強化どころか破産寸前に、販売チャンネルはマツダの一本に戻るということになりました。
5チャンネル時代に販売されていたマツダ車は実にマイナーなものが多いです。それはその販売期間の短さと生産台数の少なさに起因します。
今回はそんな5チャンネル時代のマツダの名車達を紹介していきます。
オートザム レビュー
出典:
オートザムは1989年に展開を開始しましたが、ラインナップがスズキ アルトのOEM車"キャロル"とランチア車しかなく、マツダオリジナルの車というのはありませんでした。
そんな中、登場したマツダオリジナル車が"レビュー"です。"フォード フェスティバ"とプラットフォームを共有していますが、フェスティバ自体はマツダ開発の車なので、マツダオリジナルと言えます。
この車高に対して全長が短すぎるちんちくりんなセダン、見たことありますか?私はありません。愛嬌のある見た目から分かる通り、ターゲットは若い女性です。中身は1300cc/1500ccのFF車と至って普通のコンパクトカーですが、その独特なルックスが祟って一部女性にしか受け入れられず、後にデミオに統合されることになります。
ユーノス プレッソ
この車のエンジン形式は"K8-ZE"、排気量は1800ccですがなんとV6です。発売当時は世界最小のV6エンジンでした(後に三菱が1600ccのV6を開発)。オートザム AZ-3とは兄弟車の関係にあります。
レッドゾーンが7500回転のこのエンジンは、1t超の車体を静止状態から僅か8秒で100km/h持っていく、当時としては中々のものだったそうです。
パッと見て、目を引くのは大胆な後ろ半分のデザインでしょう。リアハッチはほとんどガラスで占められ、テールはボンネットの1.5倍くらいの高さがあり、バブル期の財政面での余裕を感じさせます。V6 1800ccといい、ガラスといい、妙ちくりんなデザインといい、当時は遊び心溢れる車が作れたものなのですね。
クロノス兄弟
出典:
5チャンネル化したマツダは、自社のミドルクラスセダン"カペラ"をモデルチェンジする際、その名前を"クロノス"と改めました。
クロノスには各販売チャンネルごとに沢山の兄弟がいました。マツダ MX-6、アンフィニ MS-6、アンフィニ MS-8、オートザム クレフ、ユーノス500、フォード テルスター…とにかく沢山いました。
何故こんなに用意したかというと、一つの"クロノス"という車を複数の販売チャンネルで別の車として売ることで、スポーツカー需要、高級サルーン需要、小型車需要などの多種の需要に応えようとしたためです。
しかしこれは失敗に終わります。販売員でも分からないくらい増やし過ぎたこと、"クロノス"に名前を変えてしまったこと、MX-6だとかMS-6だとか名前をややこしくしてしまったこと、などが原因と思われます。兄弟全員合わせても月4ケタに留まってしまうなどの大ゴケを見せ、それにバブル崩壊が追い打ちをかけてきて、結果としてマツダは虫の息になってしまいます。
この一連の流れを「クロノスの悲劇」といい、自動車業界での失策として後世に語り継がれています。