暇人によるクルマ語り

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クルマのアイデンティティー

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今もOHVエンジンを採用する"シボレー カマロ"

 クルマには様々なパラメータがあります。価格、排気量、燃費、駆動方式、足回り…。いずれも数値で表せたり、言葉ではっきり言い表せるもので、モデルチェンジの度にスポーツカーなら馬力や足回りを、エコカーなら燃費を良くするなどの"改良"が加えられていきます。

 しかし、中には非効率だと分かっていても改良をしない場合があります。なぜならそれは、そのクルマを象徴する"アイデンティティ"だからです。

 

スバル WRX

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 スバルのアイデンティティーといえば水平対向エンジン+全輪駆動(AWD)です。インプレッサWRX、及びWRXになると、ここに更に"ボンネットダクト"が加わると考えています。

 あの穴の意味はご存知ですか?あれは"インタークーラー"(略称:IC)と呼ばれる装置を冷やすための穴です。

 WRXはターボ車です。ですのでコンプレッサで空気を圧縮し、それをエンジンの燃焼室に送り込みます。空気は圧縮すると"断熱圧縮"という現象ににより高熱になります。実は高温の空気というのはエンジンパワーを低下させる要因になります。一般に「気温1度上昇で1馬力低下」と言われています。その高温空気を冷却するための装置がインタークーラーなのです。

 WRXインタークーラー空冷式です。そしてエンジンの上に搭載される"上置きインタークーラ"です。つまりボンネットから空気を取り込む必要があります。それが"ボンネットダクト"です。

 しかし上置きICには弱点があります。冷却効率が悪いのです。

 ボンネットの上は負圧になってしまい、せっかく開けた穴から空気があまり入ってこないのです。

 それでもスバルはボンネットダクトを採用し続けます。東京モーターショーで公開された"VIZIV concept"にも思いっきり穴が開いちゃってるので、恐らく次期WRXにも採用されるのでしょう。

 WRX登場から26年、レガシィRSから29年、恐らくスバルはこのダクトをアイデンティティーと捉えているのでしょう。

 

ポルシェ 911

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 ポルシェ911世界で最も完成されたスポーツカーと言われるクルマです。登場から55年経った今も、初代と同じ駆動方式RR(リアエンジンリアドライブ)を採用し続けています。

 RRの利点は加減速にあります。加速時は大きな荷重が後ろにかかるので、駆動輪であるリアタイヤがエンジンパワーを路面にしっかり伝え、減速時は前輪に荷重がかかりつつも、エンジンが後輪を押さえつけるので、4輪全部にバランスよく荷重がかかります。

 しかしエンジンが後ろにあるので重心が後ろになってしまします。これにより、とてつもなくスピンしやすくなり、スポーツカーなのにスポーツ走行が難しいクルマになっています。

 また、操舵輪となる前輪の荷重はスカスカになってしまっています。操舵輪に荷重が乗っていないと直進安定性は低くなってしまいます。

 ポルシェはこれを改善しようとしました。しかし、ポルシェといえば911911といえばRRという消費者の意識を覆すことがなかなか出来ずに現在に至ります。

 

アメリカのマッスルカー達

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 日本車や欧州車のエンジンは軒並みDOHCエンジンが採用されています。低排気量+低燃費でパワーを得られるからです。しかしアメリカの大排気量マッスルカー達は今もなおV型8気筒OHVエンジンを採用し続けます

 日本ではとうの昔に消えたOHVエンジンですが、メリットはあります。

 まず"カムシャフト"というがエンジンの下の方につくため、エンジンの大きさがコンパクトになり、重心が低くなります。"シボレーコルベット"の低いフロントノーズはOHCやDOHCエンジンでは不可能とされています。

 次に、構造が単純故にコストが低く、耐久性、整備性が高いということがあります。アメリカは広大です。クルマは必需品で、一回一回の移動距離は日本のそれとは比較にならないほど長くなります。なのでアメリカ車には耐久性と安さが求められます。また、あちらでは"トラブルは自分でなんとかする"が信条です。故障したらまずは自分で直します。なので整備性も追求せねばなりません。

 デメリットとなってくる"排気量を上げないとパワーが出ない"と"高回転に弱い"ですが、アメリカはガソリンが安く、排気量や排ガスによる税金もないため、アメリカで売る分には巨大なエンジンでも問題ありません。また先述の通り、一度での移動距離が長いので、要求されるのは高回転エンジンではなく、低回転域から太いトルクを出せる疲れないクルマです。

 最近ではアメ車でもDOHCエンジンを採用する車種が増えましたが、大排気量OHVにも独特のものがあると聞きますので、是非とも残して欲しいものですね。